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2021年12月30日~2022年1月3日は年末年始休業とさせていただきます。
お客様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解賜りますようお願い申し上げます。


そもそもモーションキャプチャとは?


図1:モーションキャプチャシステム


光学式モーションキャプチャは,スポーツなどのヒトの身体運動を含めて一般に反射マーカやLEDマーカの3次元位置を計測・トラッキング(各マーカの3次元位置を計測するだけでなく,位置が変化しても同一のマーカとして識別)するシステムを指します.モーションキャプチャシステムOptiTrackは,最高1kHz,カメラから最長約30mの距離の被写体の撮影も可能です.

 ヒトの運動を計測するセンサや計測システムとして,関節角度を計測するゴニオメータ,加速度を計測する加速度センサ,角速度を計測するジャイロセンサなど多種多様ですが,ここでは他の類似システムと比較することで光学式モーションキャプチャについてご説明します.

 なお,光学式モーションキャプチャシステムの最大の特徴は計測精度で,ここで取り上げる他のシステムと比較すると,最も高い計測精度を得られます.

代表的なその他の運動計測システム

3次元画像解析:光学式モーションキャプチャの基礎となる計測系です.使用するカメラは様々で,通常の家庭用ビデオカメラ(通常,30または60 fpsでの撮影.fps:1秒あたりの撮影フレーム数,フレームレート)を運動計測に使用することもできますが,高速度カメラはさらに高速フレームレートでの撮影を可能とします.また,現在では,スマートホンやデジタルカメラで高速撮影が可能となり,残念ながらビデオカメラで高速フレームレートで撮影できるカメラの選択肢が減りました.このような比較的廉価なカメラに対して,以前は,正確にカメラ間(他のシステム)との同期を可能とする同期信号の入出力や,1 kfps以上の高速フレームレートや,グローバルシャッターで撮影できるタイプのカメラを高速度カメラと呼んでいて,このような規格を有するだけで,通常のビデオカメラと比較するとかなり高価なカメラとなります.また,この中間的な存在で,産業用カメラ(注1)という位置づけのカメラもかなり選択肢が増えてきました.
 このように高速度撮影を行う選択肢は増えましたが,カメラ自体は2次元の情報しか取得できませんので複数のカメラを使用し,3次元座標を復元します.このため,各カメラの位置関係などを知るためにキャリブレーションが必要となりますが,古典的な方法としてDLT法(注2)などの方法が使用されます.正確なキャリブレーションを行うためには手間もかかりますが,OpenCV(注3)などでも使用されるチェスボードマーカARマーカ(図2)などの利用により,簡便化する方法もあります.
 光学式モーションキャプチャと計測原理はほぼ同じと考えて構いませんが,モーションキャプチャではハードもソフトも3次元位置計測に特化し,使用するカメラの台数を増やすことなどで,計測が飛躍的に簡便化・高精度化しています.


図2:ARマーカを使用したキャリブレーション(OpenCVのページより)


骨格推定:機械学習や深層学習の技術発展から近年登場した新しい計測技術です.関節などの特徴点にマーカなどを貼付することなく認識し,無拘束の計測を実現するため.マーカレスモーションキャプチャなどとも呼ばれます.OpenPose(注4)に代表され,身体の動きをビデオカメラで撮影し,主要な関節点(手首,肘,股関節等)の位置を,2次元や3次元で出力することができます.機械学習の結果を利用しているので,通常の3次元計測と異なりキャリブレーション等が不要であったり(3次元化で必要なケースもあります),複数人の動きを算出したり,動画に重ね合わせて骨格(スティックピクチャとも呼ばれる,関節を結んだ線画.図3参照)を表示することも可能となり便利なシステムです.精度は決して良くありませんが,静止画も含めてカメラで撮影するだけで手軽に運動を計測できるため,利用が広まっています.


図3:骨格推定


デプスセンサ(3Dセンサ):いくつかの計測原理のものが存在しますが,センサからの点群の深度情報を利用して3次元位置を測定します.身体運動計測では主として前述の骨格推定と併用して利用します.特別なカメラを購入する必要はありますが比較的低価格で入手しやすいですが,奥行方向の精度は同様に低くなります.Kinect(マイクロソフト社製)やRealSense(Interl社製)に代表されますが,Kinectはすでに市場から撤退し,RealSenseも撤退の情報が流れています.

磁気センサ:Polhemus社製の製品に代表される,磁場発生装置によって計測環境に構成される磁界を利用して位置と姿勢角度を計測するシステムです.光学系の計測システムと異なりオクルージョン(注5)が発生しません.また,サンプリングレート(カメラのフレームレートに相当.一般にHzの単位を使用)はモーションキャプチャと同様に100~1kHz程度まで計測できますが,大雑把にみて光学式モーションキャプチャと比較して1桁程度精度が低いと考えて良いでしょう.またセンサなどは有線の計測システムになります.

ゴニオメータ:もともとは身体運動に限らず角度を測る計測機器でしたが,医療・体育の分野などで昔から身体運動の関節角度を計測する機器として使用され続けています.一般的には身体各部位の長軸方向と一致させた軸間のなす角度や回旋角度を計測することが基本で,典型的なセンサとしてポテンショメータ(軸の回転角度に応じて抵抗値が変化する可変抵抗)を使用したもが多いですが,現在では多様に変化しています.その発展形として光ファイバを使用したデータグローブなどもあります.図4右図のように全身の3次元計測を行うことはあまり現実的ではありませんし,精度もあまりよくはありません.部分的な関節角度等を気軽に計測するときには適したセンサです.