f1, f2, f3, f4の力覚センサによって計測される床反力


フォースプレートは,通常,3個または4個の力覚センサによって,まずを直接測します.この複数の力覚センサで計測される力の総和が床反力地面反力)です.このとき各センサの位置が既知なので,COP(圧力中心)やフリーモーメントなどを計算できますが,これらは二次的に計算される物理量です.

そこで,ここでは,この「床反力の物理的な意味」について考えていきます.

床反力とは?

通常,フォースプレートの上にはヒトが立ち,そのときの身体運動によって発揮される床反力が計測されますが,この床反力が物理的にどのようなメカニズムによって変化するかその力学を考えていきます.

なお,一般的には,吸盤などによってフォースプレートに接触するような利用方法は想定されていません.水平方向には摩擦だけが作用し,法線(鉛直)方向に対してはフォースプレートを持ち上げる(引っ張る)ような力を作用させないことが前提となっています.


床反力の水平成分が走速度を規定


フォースプレートで床反力を計測すると,その大きな鉛直方向の力成分に注目してしまいます.実際,ランニングの運動の床反力を計測すると,大きな鉛直方向が計測され,走速度が大きいほど鉛直方向の速度も大きくなります.

しかし,いくら鉛直(法線)方向の力が大きくても,空中期の時間が長くなるだけです.「走速度を直接拘束するのは,床反力水平成分」です.

走速度に対する鉛直成分と水平成分の関係

走速度は床反力の水平成分によって直接規定され,「水平歩行の加速度の積分(面積)」によって計算されます.なお,水平方向の加速度は床反力の水平成分を質量(体重)で割ることで計算できます.

ただし,身体運動では,床反力の水平成分は鉛直方向の成分と独立に決まるわけではありません.


フォースプレート


運動のパフォーマンスを知る上で,角度,位置,速度,加速度などの運動を知ることは重要です.

さらに,それらの原因を作っているについて理解することも,重要です.
たとえば,投球速度やスイング速度が最大になる時間よりもかなり前に,身体全体で運動のエネルギーが生成され,腕やバットなどの道具に伝達されています.ゴルフスイングの場合では,トップからダウンスイングの前半でスイング速度は決まってしまいます.
リリースする際やヒットする際にいくら努力しても,一般には,エネルギーを増大させるという意味では,手遅れです.ゴルフにおける具体例は「フォースプレートでできること」をご覧ください.

速度などの運動現象は,あくまでも力によってなされた現象の現れですから,運動の原因であるを計測し可視化することはとても重要です.

反力をいかす

ヒトは大きな力を発揮するために,何かを押したりすることで初めて大きな反力を得ることができます.


暖簾に腕押し


硬いものや重たいものなどを押すことで,大きな反力が生まれます.極端に述べると,押すものがなければ大きな反力は得られません
スポーツに限らず多くの身体運動では,ヒトは地面を押すことで,反力を得ることができ,その力を身体運動に有効利用しています.

床反力(地面反力)

身体全体にとって,床反力は身体運動を行うための外力になります.すなわち運動の動力源です.身体が接触している部分が地面以外になければ,身体運動において床反力が(見かけ上)唯一の外力になります.

身体運動の課題

したがって,身体運動ではこの床反力を生成し,それを目的の場所に伝達することが運動における最も重要な課題になります.
歩行やランニングなら,床反力を身体重心に伝達することで,ゴルフスイングならクラブに伝達し,野球の投球ならボールに伝達することが運動の主な課題になります.
身体を移動する際には床反力が身体重心に作用することがイメージしやすいかもしれません.さらに身体重心よりも離れたボールやクラブなどの道具に伝達する運動の場合,床反力が伝達していくことがイメージしにくいかもしれませんが,実は,スイング運動でも,スイング(振り子)運動を行うための動力源はやはり床反力が中心で,身体を経由して伝わっていきます.


床反力がクラブに伝達される


床反力を計測する道具:フォースプレート

フォースプレートは身体運動の動力源である床反力(地面反力)を計測する道具です.フォースプレートを用いた計測によってどのようなことを明らかにできるかは「フォースプレートで計測できること」を,フォースプレートの詳細は「フォースプレートによる力計測」をご覧ください.